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ソウルフードの追憶と素敵なフレンチ

誰しも、たまに食べたくなる故郷の愛すべきソウルフードが一つや二つあるものだ。

また、ソウルフードは、はじめてのデートで彼女や彼と食べた味だったり、家族とよく食べにいった味だったり、甘美な思い出とともに記憶保存される。

かくゆう私のソウルフードといえば、北海道は釧路の「スパカツ」(スパゲッティカツレツの略称)だ。

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これは、釧路人であれば、知らない人はいない泉屋(今年で創業55周年)の超ロングセラーのスパゲッティなのだ。

見ての通り、やけどするくらいに熱せられた楕円形の鉄皿に、ノンアルデンテなゆで加減のママースパゲッティがどーんと山盛りに乗っかり、その上にカツカレー方式にサクサクのカツレツがズラリと並べられ、仕上げに泉屋特製の濃厚ミートソースが溢れんばかりにかけられたものが、スパカツだ。

先日、帰郷した際、無性に食べたくなってふらりと泉屋に入り、スパカツを注文してみた。

ビールを飲みながら待っていると、ジュージューと細かな油滴を飛び散らしながら、スパカツが運ばれてきた。

「あっ、これ、これ、これだよ。」

スパカツとの再会は、実に15年ぶりくらいだったが、メガネと服に油が飛ばないか心配になるのも、味も、昔と同じで、うれしくなってしまった。

若かりし頃は、これよりも大きい大盛りをペロリと食べられたはずなのに、半分でお腹いっぱいになって残してしまったことに、加齢のショックを受けつつお店を後にしたのだった。

今日は、スパカツに完敗。

翌日の夜は、リベンジよろしく、気分を取り直して、フレンチに出かけることに。

釧路ANAホテルで腕を振るうシェフ楡金さんのプライベートフレンチで、以前から友人から薦められて一度訪れてみたいと思っていたレストランだ。

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最上階のエレベータを降りて、右奥に案内されると、釧路の港町夜景が一望できる大きな窓ガラスの前にテーブルウェアがセットされたテーブルが1つだけ。

そう、ここは、一組のためだけに用意された完全個室の贅沢な空間なのだ。

今までも、いろいろなフレンチを訪れているが、このような素敵な雰囲気ははじめてで、着席してからは、港に出入りする船や、橙色にともる霧灯を眺めながら、これから出会うワインや料理に思いを馳せた。

最初は、シャンパンで乾杯したあと、ワインは、地元釧路生まれの釧路育ちというソムリエ氏に、お料理に合うフランス赤ワインをセレクトしていただいた。

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今夜のおすすめは、MAR GAUXで、ヴィンテージは2007年だ。

テイスティングしてみると、華やかな香りがバーンときて、ベースに樽の香りがあり、私が好きなタイプで、時間の経過とともにどんなふうに変化してゆくか楽しみだ。

素晴らしいセレクトで、瓶熟成が進んでいて、いかに保存状態が良いかがわかる。

そうこうしているうちに、お料理が運ばれてきて、ワインとともにおいしくいただいた。

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ワインは、温度の上昇と時間の経過とともに、落ち着いた香りになり、なめらかな感じに変化、それでいて樽の香りがしっかりと。

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フレッシュなオレンジとコニャックを使って、目の前で、グラニュー糖をゆっくりと熱しながらカラメルを作りながら、クレープの温かいオレンジソース添えを調理してくれるというサプライズも心地良い。

温かいソースに冷たいアイスクリームがよく合う。

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楡金さんのフレンチは、地元食材がふんだんに使われており、釧路人の味覚に合わせたもので、地元愛を感じる暖かいものだった。

なんだかその味は、ソウルフードに通じるなにかを感じるのだ。

はじめていただく味なのに、食べ慣れたような味なのだ。

舌の記憶というか、なんというか。

23年も住んでいるとすっかり東京の味に慣れてしまったが、味のベースは、やはり、生まれ育った北海道なんだなと妙に納得してしまった。

お料理の途中で楡金さんともお話をさせていただき、そのお人柄に触れる機会もあり、楽しくも、大満足な一夜だった。

人に教えたくなくて、再訪したいお店がまた1軒増えてしまった。

楡金さん、ご馳走様でした。

 

【MENU】
・セミドライフルーツのチャッツネとフォアグラのムース

・近海・魚介のタルタル彩りピクルス

・デミタスカップ1杯の地場野菜のポタージュカプチーノ仕立て

・白菜で包んだ根室・帆立貝と甘海老のムース「ブーダン・プラン」仕立て

・お口直しのシャーベット

・標茶・星空の黒牛のポアレ

・釧路フルーツのコンポート

・クレープの温かいオレンジソースとアイスクリーム添え

・エスプレッソ

ずっと記憶に残る大切なワインの話

帝国ホテルのザ・クラブルームのソムリエ戸谷さんにイタリアワインを教えていただくようになって1年くらい経過した。

その間、戸谷さんセレクトのイタリアワインをかれこれ10本くらいは飲ませていただき、産地のこと、ぶどうの種類のこと、料理のこと、名前の由来等を楽しく教えていただいた。

そんな中、先月、とっておきのワインを出していただいた。

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アマローネ、デッラ・ヴァルポリチェッラ ヴィンテージは、2006年だ。

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戸谷さん曰く、数あるアマローネの中でも、一番凄いらしい。デカンタージュすると、余りにも濃すぎて、ロウソクの光がほとんど透過しないらしい。

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いざ、テイスティング。

いままで体験したことがない豊かで芳醇な香りと、口に含むと舌の隅々まで広がる上品な甘さに、思わずうっとりしてしまうくらいの素敵なワインだった。

美しい女性を見ているかのような錯覚にも似た幸せの味わいなのだ。

困ったことに、これを飲んでしまってからは、他のワインがしばらくは飲めないという事態に。

いつかは、美しい人と一緒にこのアマローネを味わいたいものだ。